内科

動物病院で扱う病気のなかで、内科がカバーする範囲は非常に広く、元気がない・食欲がないなど、動物が見せる様々な症状に合わせて、血液検査や画像検査、尿検査などを行い、その原因を見つけて治療していきます。
動物の身体の中で何が起こっているのか、五感をフル回転させて診察し、論理と経験を組み合わせて原因を探っていくところに面白さと難しさがあり、検診のとき「良くなった」「元気になった」という言葉を聞けるのが無上の喜びです。
飼い主様と二人三脚で診察をしていくことがとても重要で、飼い主様からのお話も貴重なヒントになりますので、気になることは何でもお知らせください!

内科

主な症例について

急性膵炎

急性膵炎はワンちゃんの発症が多く、頻回の嘔吐や下痢、食欲廃絶などを引き起こす病気です。
膵臓とは、腹部頭側に存在し、左葉は横行結腸と胃の間、右葉は十二指腸に沿って走行し、消化酵素を分泌している臓器です。

急性膵炎

そして、その膵臓の組織が、消化酵素によって障害を受けることによって膵炎が発症します。
具体的な発症原因は明らかではないですが、膵管の障害や膵臓組織への強い刺激は確実な誘発因子といわれています。
また、高脂肪食の多給や血管系の障害による膵臓の虚血などが自然発症の誘因と推定され、他にも様々な誘発因子が考えられています。

急性膵炎の診断は、下記の事項を総合して判断します。
1. 嘔吐や腹部疼痛などの症状
2. 膵酵素の血中濃度
3. 腹部超音波検査での膵臓の異常

急性膵炎では症状が激烈な場合が多く、腹痛のために「お祈り姿勢」と呼ばれる姿勢をとることもあります。
早期治療が重要とされ、嘔吐や下痢などによる体液の喪失の補正のために輸液を第一に行います。
また、それに加え、膵臓を休ませるために数日間の絶食絶水を行います。
全身状態が良好に安定してくると、食事を水から始めて、徐々に低脂肪食を食べてもらいます。
さらに必要に応じて、制吐剤や鎮痛剤を投与する場合もあります。
早期の治療によって回復率も上がりますので、早めの受診をおすすめします。

免疫介在性血小板減少症

血小板減少症は、薬剤やワクチン、腫瘍、感染症などによって続発することがあります。
臨床徴候としては、皮膚や粘膜の紫斑、消化管出血、鼻出血、血尿などの出血傾向が認められることがあります。
死亡率は30%と出ており、重度の症例においては入院をして治療を始め、慎重な経過観察が必要となります。

下記の症例では、プレドニゾロンによる副作用を軽減することに加えて、免疫抑制効果を増強するために、治療初期からシクロスポリンを併用しました。
結果的には投与開始してから血小板数の増加が認められるまでに10日程を要しました。
その間に徐々に紫斑の改善があったので今回は見送りましたが、反応が乏しい症例にはヒト免疫グロブリン製剤の投与を行う場合もあります。
治療薬は徐々に減量して維持療法を行い、3〜6ヵ月程継続の後、休薬していきますが、再発する場合もあるのでその後の検診も大切です。

免疫介在性血小板減少症
免疫介在性血小板減少症

猫の爪破損

ワンちゃんも猫ちゃんも爪が伸びすぎると物にひっかかりやすくなり、折れたり剥がれたりする原因になります。
特に第一指は見落としがちです。
自宅で定期的に爪をチェックし、伸びすぎてないか見てあげましょう。
下記は、猫タワーから落ちたとき両前肢の第一指をひっかけてしまい爪が剥がれ出血している症例です。

猫の爪破損

両前肢の第一指の爪が完全に剥がれていましたが、来院時には出血は止まっており、腫れや膿んでいる様子はありませんでした。

猫の爪破損

治療方法

感染を防ぐため傷口周辺の毛刈りを行い、患部を消毒しました。
患部が接地しない場所であったので、包帯などは巻かずに管理して、自宅で一週間の消毒、抗生剤の投薬、患部を舐めないようにネッカー着用を指示しました。

免疫介在性溶血性貧血

免疫介在性溶血性貧血は、命に関わることも多い血液疾患です。
免疫の異常によって、自らの血液(赤血球)を異物と認識し、体内で赤血球が破壊されて貧血が起こります。
原因がはっきりとわからない場合が多いですが、中には他の基礎疾患(感染症、寄生虫性疾患、腫瘍性疾患、薬剤、不適合輸血)によって起こる二次性のものもあります。

貧血によって元気や食欲が低下したり、呼吸が荒くなったりします。
重度の貧血では歯ぐきや舌の色が白っぽくなります。
また“黄疸”といって皮膚や白目が黄色っぽく見えたり、尿が濃いオレンジ色や茶色になったりすることもあります。
この病気は突然起こることも、数日かけて進行することもあります。

免疫介在性溶血性貧血

“球状赤血球”(矢印)が血液中にみられるようになります。

治療方法

治療として次のことを行っていきます。
1. 免疫を抑えることによって貧血の進行を止める治療
2. 合併症を抑えるための治療

実際には貧血の進行によって死亡することよりも、合併症によって命にかかわることが多いのが現状です。
合併症で最も多いのは血栓塞栓症です。
これは血管の中で血栓ができ、詰まってしまう病気で、突然死を引き起こす可能性もあります。そのため抗血栓療法を行っていきます。
また、動物の状態に合わせて、輸液、輸血、酸素吸入なども行っていきます。

貧血から回復した場合でも再発させないようにすることが大切です。
免疫抑制治療を短期間で終了すると再発してしまうことが多く、再発症例での治療に対する反応は悪いことが多いです。
症状や血液検査の結果が良くなっても、再発を予防するためにしばらくの間は薬を内服する必要があります。

免疫介在性溶血性貧血は死亡率が高い疾患で、状態がある程度安定している場合でも急な変化や突然死が起こり得ます。
残念ながら現状では、定期検査での発見や予防ができる疾患ではありません。
しかし早急な対応が必要な疾患ですので、飼い主のみなさんの“目”がとても大切になります。
歯ぐきや舌、尿の色の変化に気づくこともありますので、日頃からそれらに変化がないか気にしていきましょう。

慢性下痢(原虫感染)

慢性下痢の原因は様々で、腸内細菌バランスの異常、寄生虫感染、炎症性、食事性、腫瘍性などがあります。

慢性下痢(原虫感染)

“球状赤血球”(矢印)が血液中にみられるようになります。

検査について

消化管内寄生虫については主に、糞便検査を用いて検出します。
糞便検査には大きく2つの方法があり、便を生理食塩水で溶かし直接顕微鏡でみる直接法と、便を検査液に溶かし、時間が経って浮いてくる虫卵や寄生虫を検出する浮遊法があります。
寄生虫感染があった場合でも1回の糞便検査では検出できないこともあり、繰り返し検査を必要とする場合もあります。
その他にも、下痢を起こす主な感染症(ウイルス、細菌、寄生虫感染)について検出する、便を用いた遺伝子検査もあります。

治療方法

当院では、抗生剤、回虫や条虫といった腸内寄生虫に効果のある駆虫薬、消化の良い療法食や食物繊維の多い療法食へのフード変更を行ってもらい、便の状態を検査します。
便検査を繰り返し行っても、改善されない場合は血液検査を行います。
また、便を用いた遺伝子検査も行うことができます。
下痢は、原因の特定が難しく治療に時間がかかるケースもありますが、それぞれの症例に合わせた検査・治療で対応していくことが大切です。

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