腫瘍科

ペットが家族として迎えられて高齢化が進むとともに、犬猫ともに「がん」が死因のトップとなっています。
「がん」と一言でいっても、症状や治療方法はさまざまですが、「できるだけ元気で楽しい毎日をこの子と一緒に過ごしたい」というのが、飼い主様にとっての願いであると思います。
がんの治療は日々進歩してしています。
ご希望にお応えできるよう、常に新しい情報を取り入れ、また飼い主様が納得・理解されるまでしっかりと話し合った上で治療を進めて参ります。
現在、腫瘍で不明な点や不安を抱えておりましたらご相談ください。

腫瘍科

主な症例について

犬の口腔内メラノーマ

口腔内悪性腫瘍は、犬の悪性腫瘍の6%を占めており、悪性腫瘍全体で4番目に多いです。
その中でも30~40%がメラノーマ(悪性黒色腫)で、小型犬に多いとされています。
口腔メラノーマは、領域リンパ節や肺へ高頻度に転移する悪性度の高い腫瘍です。
転移率は80%に及ぶと報告されており、主な死因はこれによるものです。
また犬歯より後ろに発生した方が、予後が悪いといわれています。

犬の口腔内メラノーマ

現在の標準的治療は外科、放射線治療(もしくは併用)±化学療法±免疫療法です。
無治療の場合、生存期間中央値は65日です。
外科手術反応性は中等度〜良好です。
通常少なくとも2cmのマージンが必要となるため、顎骨や眼窩切除が必要となる場合が多いです。
外科単独で治療された場合の生存期間中央値は、150〜318日とされています。
放射線治療に対する反応は良好です。
70%ほどで完全寛解が得られると報告されています。

しかしながら治療を実施することができる施設が限られていること、費用の面などが壁となっているのが現状です。
放射線治療を受けた犬の生存期間中央値は211〜363日とされています。
化学療法(抗がん剤)には抵抗性があり、十分な効き目が得られないのが現状です。
免疫療法に関しては、がんワクチンなどの研究が進められています。

条件が高齢であること、費用などから、外科・放射線治療は選択せず、免疫療法の1つである「インタードッグ療法」と「低用量シクロフォスファミドメトロノーム療法」があります。

インタードッグ療法とは、具体的なエビデンスはまだないものの、メラノーマや肥満細胞腫などにおいて再発、転移の抑制や延命効果が報告されています。

低用量シクロフォスファミドメトロノーム療法は、こちらも詳細はまだ不明ですが、腫瘍免疫の増強により効果があるとされています。

口の中のできものは悪性腫瘍の可能性があるため、見つけたら早めに来院していただくことが大切です。
歯磨きの時など、口の中を見ておかしいなと思ったら受診してください。

肛門嚢アポクリン腺癌

肛門周囲腺腫は、皮膚に発生する腫瘍の中でも発生率が高く、肛門周囲に発生する腫瘍のうち80%以上を占めるとされています。
この腫瘍は多発しますが良性のものが多く、早期に治療さえできれば怖いものではありません。
しかし、残りの20%近くは悪性腫瘍であり、肛門周囲腺腫、肛門嚢アポクリン腺癌が発生したときは、迅速かつ慎重な対応が迫られることになります。

肛門嚢アポクリン腺癌

肛門周囲腺腫(良性腫瘍)はテストステロンというホルモンに関係して発生するため、去勢手術が有効な治療(さらには予防)になりますが、肛門周囲腺癌(悪性腫瘍)は、去勢しているかどうかに関わらず発生します。
肛門嚢アポクリン腺癌(悪性腫瘍)は稀にしかみられませんが、ほとんどが雌に発生します。

肛門嚢アポクリン腺癌は、ちょうど肛門嚢の位置(肛門の4時あるいは8時の位置)の皮下に発生します。
硬くて、カッチリとくっついた状態で触れるのですが、元々肛門嚢自体が比較的深部に位置しているため、肛門周囲腺腫のように目で見てわかるようになるには、かなり大きくなった時点となります。
発生後の腫瘤の増大スピードは急速で、腰部のリンパ節への浸潤も強いです。
そのため腫瘍が進行した場合は、排便障害や疼痛を訴えて来院されることがあります。

猫の乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は猫の腫瘍で3番目に多い腫瘍です。
犬の乳腺腫瘍の発生率と比べると、猫ではその半分以下の発生率と言われています。
注意が必要なのは、犬の乳腺腫瘍では50%以上が良性であるのに対して、猫では70~90%が悪性とされ、そのほとんどが腺癌です。
そのため、多くの猫の乳腺腫瘍は急速に成長し、支配リンパ節と肺に転移します。
また、猫の乳腺は4対であるが、単独で侵されることは少なく、複数の乳腺に発生が認められることが多いとされています。
上述したように、猫の乳腺腫瘍のほとんどが悪性度の高い腫瘍であることから、単発性の腫瘍であっても、予後改善のために広範囲の乳腺切除が推奨されています。
当院でも、術前に遠隔転移の有無と、腫瘤の固着やリンパ節の腫大も認めない症例では、単発性であっても、基本的には片側乳腺全摘出術を実施しています。

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